先日、少し大きな総合病院に行ったときのこと。
待合所が混み合っていて、あー時間かかるかも、なんてのんびり構えながら、待っていた。
待ちくたびれて、眠くなってきたその時、事件が起きた。
「いつまで待たせんだ! 早くしろ!」
年配のおじさん(もしかしたら、おじいさん?)が、受付のお姉さんに怒鳴っていた。
「今日は混み合っていてご迷惑かけております。もう少しお待ち下さい」
事務のお姉さんは、おじさんの勢いに気圧されながらも、頑張って対応していた。
事務のお姉さんたちが、他の患者さんを対応するたびに、そのおっさんは「早くしろ」とわめきたてて、仕事を妨害していた。
ただでさえ冬の寒い日。
そのおっさんの放つ一言で、その場が氷河期に突入したかのように、凍りついた。
私を含めて診察を待つ者たちは、みんな待ってるし、という顔をしていたのは、見てなくてもわかる。
同胞たち、病気を診てもらいに来たのに、もっと具合悪くなりそうだよな。
うん、わかる、わかるぞ。
見ないようにしようと思っても、人間皆、野次馬根性というのは備え付けられているので、私もその根性に倣って、おっさんの動向をチェックしてしまった。
待ちきれないおっさん。
聞き耳をたてるまでもなく、予約なしに来たらしい。
その病院は、予約なしでも診てもらうことができるが、基本は予約優先になる。
もちろん、予約しても予約時間通りにならないことが多く、半日ないし、一日潰れてしまうことも多々ある。
けれど、病院ってそういうものだし、仕方ないと諦めている。
大多数の人がその思いを感じているのではないかと推測している。
なので、相当の覚悟を決めて病院に来ている同士たちを差し置いて、おっさんの「具合が悪いんだから早くしろ」と喚き立てるのは、正直、おもしろくない。
いや、それよりも、具合が悪い???
あんなに元気いっぱいに喚いていて、具合が悪いだと……?
私の頭の上にハテナマークが飛んだ。
くるくると回るハテナマーク。
おっさん、お前は何を言っているんだ????
「病人をこんなに待たせやがって、ふざけんな」
殴りかかろうとする勢いで、おっさんの声が院内に響いた。
すると、スーツ姿の男の人がどこからか現れた。
病院の偉い人だ。
そんな雰囲気を醸し出していた。
若いお姉さんには怒鳴りまくっていたおっさんも、偉そうな人の登場に大人しくなった。
「こちらへどうぞ」
偉い人に連行されるおっさん。
結局、私が診察してお会計をするまで、おっさんの姿は見なかった。
おっさんは、短気を起こしたことで、きっと損をしたのだと思う。
本当に体が辛いのなら受付のお姉さんに言って看護師さんを呼んでもらうことも可能だ。
それが、あんなに騒ぎたてたせいで、自ら症状を伝えることもできずに、どこかへ連れ去られてしまった。
病院の規定に従い、予約を入れてから診察するか、呼ばれるまで大人しく待っていれば良かったのだ。
目に映るものはメッセージとかいうが、短気で癇癪を起こすことは、損をするんだなと、改めて思った出来事だった。
まもなく2022年も終わる。
何もなくても、忙しなく感じているが、できるだけ広い心でデンと構えながら、新年を迎えたいものである。